あらすじ

境界市事象管理局。 この都市では、全ての出来事がナノ観測網によって記録・解析され、 「問題あり」か「問題なし」かに即座に分類される。 問題がなければ、記録は削除される。 削除された出来事は、最初から存在しなかったことになる。 下級記録官である私は、その最終判定を日々淡々と処理していた。 誰も怪我をせず、誰も違法を犯さず、誰も助けを求めない。 だから、問題は無い。 だがある日、「完全に問題の無い市民」のログに、 数値化できない欠損が発生する。 事故でも、病気でも、死亡でもない。 ただ――判断されなかった感情の空白。 観測されないものは、存在しない。 存在しないものは、守られない。 それでもシステムは正常に稼働し、 都市は静かに、正しく回り続ける。 「問題は、無かった。」 その一文が、何を消し続けてきたのかを、 この物語は最後まで説明しない。

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小説を読もう2026/01/19
  • 現在の作品『問題は、無かった。――観測社会SFログ』