あらすじ
「世界の真理のために、あなたは何を削れますか?」
白夢そらは、世界の真理を知りたかった。
神に祈りを捧げるためではない。
根源と呼ばれる見えざる源から始まったこの世界が、どのような理で成り立ち、どこへ向かうのか――それを、自分の頭で理解したかった。
異世界からの事故転移でこの世界に迷い込んだ天才少女は、その才覚を見込まれ、聖始天教会の研究機関に保護される。
教会は彼女の頭脳を欲し、「神の器」としてではなく、まずは聖痕研究の中枢を担う魔術研究者として迎え入れた。
霊核に直接刻む禁断の魔術・聖痕は、自我と記憶を少しずつ削り落としながら、星書庫と呼ばれる世界の全記録に触れ、さらには禁域へ至る道を開くという。
無数の失敗例と、植物人間になった被験者たちの末路を知りながらも、そらは自らその術式を受け入れた。
邪教団の殲滅。肉体を持たぬ魔神との戦闘。魂と肉体の境界を解き明かしていく研究の日々――
成果と引き換えに、少女の感情は静かに摩耗していく。
やがて彼女は「神の使徒」として完成し、神子であり世界を渡る鍵とされる少女・雨宮天理の教育係となるが、教え子とのささやかな日常の中で、消えたはずの「痛み」と「懐かしさ」が、ときおり胸を刺す。
星書庫の記録と禁域の先に、自分が求める答えは本当にあるのか。
世界の真理と引き換えに削れていく自我の残り火は、最後に誰の名を呼ぶのか。
これは、聖痕に蝕まれながらも、世界と、たった一人への想いだけは手放せなかった少女の物語。
世界を渡る門の前で、白夢そらは、かつての少年に告げる。
「私を……殺してください」――と。