あらすじ
鑑定士は、世界を数値で測る仕事だ。
魔力、適性、耐久、成長率──定められた基準に従い、すべてを同じ物差しで評価する。
だが、その鑑定士は追放された。
理由は単純だ。
彼の鑑定は「正しい」のに、「揃っていなかった」。
同じ対象でも、使い方や条件によって結果が変わる。
それを前提にした彼の鑑定は、再現性がないとされ、“無能”と判定されたのだ。
ギルドは正しい。
基準も正しい。
だからこそ、制度は彼を切り捨てた。
しかし、現場では別の問題が起き始める。
数値は合っているのに、選べない。
注意書きが増え、判断は保留され、事故は減ったが、納期は遅れる。
やがて「判断しないこと」そのものが、コストとして積み上がっていく。
誰が決めるのか。
誰が責任を負うのか。
正しさの代金は、誰が払うのか。
本作は、感情で敵を打ち倒す“ざまぁ”ではない。
人ではなく、評価基準そのものを問い直す物語だ。
主人公は最強にならない。
声高に正義を叫ばない。
ただ、世界が見落としていた「判断の前提」を、理屈で一つずつ露わにしていく。
その鑑定は正しい。
だが、判断できない。
無能と切り捨てられた鑑定士が示すのは、
“正しさ”より先に考えるべき問いだった。