あらすじ

埼玉から富山へ転勤して一年。二十五年間慣れ親しんだ土地を離れた主人公・坂上功は、仕事には恵まれながらも、帰宅後の静けさに耐えられずにいた。 一年前に別れた恋人・石川ひかりの存在が、今も心の奥に残り続けているからだ。別れの理由もわからぬまま失った彼女を忘れられず、功は日々の生活にどこか空虚さを抱えていた。 ある日、行きつけの定食屋の大将から「強く望む場所へ連れていく不思議なバス」の都市伝説を聞く。半信半疑のまま過ごしていた功は、仕事中にふと、ひかりの死を知らせる友人からの古いメールを開いてしまう。そこには、ひかりがガンで亡くなっていた事実と、功に迷惑をかけまいと別れを選んだ理由が綴られていた。 胸の奥に押し込めていた悲しみが再び溢れ、功は仕事を切り上げて帰路につく。雪が降り始めた夜、ふと目に入ったのは、都市伝説に語られた“使われていないバス停”。時計は23時20分。功は思わずベンチに腰を下ろす。 やがて、闇の中から二つのオレンジ色のライトが近づき、バスが停まる。運転手は「どこでもバス」だと告げ、功の行き先は自動的に“石川ひかり”と表示される。強い願いが対価となり、滞在時間は30分。功は迷わず乗車する。 辿り着いたのは、かつてひかりと付き合い始めた思い出の公園。ブランコに座るひかりは、生前と変わらぬ笑顔で功を迎える。二人は別れの真実、互いの想い、伝えられなかった言葉を静かに交わし合う。ひかりは「あなたのおかげで幸せだった」と告げ、功もまた「出会えてよかった」と涙ながらに伝える。 光に包まれ、ひかりとの再会は終わりを迎える。元のバス停に戻った功は、不思議と寒さを感じなかった。翌日、定食屋でいつもと違うメニューを頼む自分に気づく。 世界が少しだけ明るく見えた。 功は、ひかりと共に生きた時間を胸に、前を向いて歩き始める。

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小説を読もう2026/01/18
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