あらすじ

内向的だった僕は、大学のサークルで同年齢で同学年の女性・小菊と一緒に活動するうちに、その女性の活発で飾らない優しい人柄に惹かれ強い恋慕の感情を抱くようになる。しかし、自分が立派な社会人に成長しないうちは、彼女に自分の気持ちを告白する資格はないと思い、告白せずに卒業する。  就職して仕事に励むが、いつしか仕事に埋もれ自分の考えや思いを封じ込めてきたことに気づき、立派な社会人とはほど遠い自分を嘆く。そして離職を考えるようになる。  そんなある日、サークルの先輩の結婚式に招待され、そこで小菊と再会する。彼女への恋慕が蘇り、なんとか交際の申し込みをすることができ、交際が始まる。そして結婚する。  結婚してますます彼女を慕う気持ちが強くなる。彼女の影響を受けて、仕事以外でも人との交わりに積極的になり、一緒に活動することも多くなる。  そんな活動の中で特に印象的なのは、新潟の地震災害のボランティア活動である。その活動で老人とその孫と知り合い、親しくつき合いを始める。約一年十ヶ月後に老人が病死し、僕は老人の孫の後見人となる。櫂という名の彼は、僕の後見人の役割が終わった後も身内同然の大切な存在となる。  妻は僕の母の世話や介護にも献身的に取り組む。母は心からの感謝を表す手紙を残して亡くなる。  僕たち夫婦にとって最大の問題が、僕の海外赴任中に起こる。妻を赴任地に呼び寄せて一緒に住むのを楽しみにしていた矢先、義父が怪我をして入院する。僕は父親を案じる妻の心情を察し、また自らも義父のために何らかの支援の手助けになりたいと思い、妻に父親の介護をするように勧め、単身赴任生活を継続する。妻に赴任地に来てもらう機会がないわけではなかったが、赴任生活があと半年ほどであることもあって、妻に父親の介護を続けてもらう。  その間に妻の体調に異変が生じる。僕は病気のことを気にするあまり、妻の心の奥底の苦しみに気づいてやることができなかった。実は、妻は僕の支えになれていない自分を恨めしく思い、強度の鬱状態に陥ったのかも知れないのである。そのような状態の故に妻は自ら進んで病院で診察してもらわなかったと思われる。  妻が病気の急性増悪により危機的な状態にあることを知ってすぐ、僕は退職し帰国して妻の傍にいることにする。妻の気持ちを思いやることができなかった自分を責める。結局、看病の甲斐なく妻は亡くなる。  僕は妻の、覚悟という言葉では言い表せない僕への思いに応えられなかったのである。深い悔恨に沈み、流れる時のむなしさを痛感する。幸い、妻の思いが僕の心の中に生きており、その思いを生かしていく限り、僕は流れる時に飲み込まれないで生きていけると思う。妻を育んだ土地が僕をも妻のように育んでくれると思うのである。  おおよそ以上の話が、僕が妻に語りかける形式で展開する。

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カクヨム
カクヨム2026/01/18
  • 現在の作品惜しみなく流れる時よ