あらすじ
Blade of Rain
雨の刃近未来のネオ・トーキョーには、もう桜は咲かない。2078年、下層街を永遠に濡らす酸性雨が、
すべての花を腐らせ、すべての色を灰色に塗り潰した。
かつての桜並木は鉄骨の残骸となり、
ホログラムの残像さえ、雨に滲んで消えていく。そんな世界で、ただ一人、桜を咲かせる存在がいる。彼女の名は泉崎桜。
コードネーム:サクラ。右目に宿る深紅の機械眼が闇を切り裂き、
左目の銀灰色の生身の瞳が、
失われゆく「私」を必死に映し続ける。 彼女が振るうのは、父が遺した虚空桜の流派を継ぐナノブレード「零式・朧月」。
雨に触れるたび青紫に脈打ち、
虚空の残響を呼び起こす刃は、
戦いの瞬間にだけ、
無数の桜の幻影を雨の中に咲かせる。
すべてを細やかに切り裂くとき、
最後に咲くのは、儚い一輪の桜。
アーク・コーポレーションの追跡は止まない。
ファントム・ユニットのハウンドは牙を剥く。
彼女は戦い続ける。
人間性を雨に溶かされながらも、
左目だけが静かに囁く。
「私、まだここにいる」
この物語は、桜の咲かない近未来で、
唯一、刃によって桜を咲かせる少女の物語。
雨に打たれ、記憶が削られそれでも彼女は刃を握りしめる。
失いたくない温もりを溶けゆく自分を、最後の桜のように、必死に散らしながら。
彼女の刃が、雨の中で、一瞬だけ、美しく、切なく桜を咲かす。