あらすじ

雨はすでに上がっていた。にもかかわらず、王城の中庭は律儀に濡れたままで、石畳の隙間という隙間が「こちら、まだ仕事残ってますけど」と光っている。 そしてその真ん中に、聖女が立っていた。 純白のローブ。光輪みたいなフード。清楚な微笑み。額に浮かぶ汗は、雨の名残ということにしておく。 問題は、その聖女が――偽りだという点だ。 中庭の端で、私は黒革の帳を抱え直す。王国公文書局・第六記録係、見習い書記のユストである。配属初日に「追放会議の議事録を取れ」と言われ、うっかり返事をした私が悪い。 「では、会議を始める」 追放会議議長が咳払いし、卓上の砂時計をひっくり返した。さらさらさら、と時間が落ちていく音だけが、濡れた中庭にやけに鮮明だった。落ち切ったら追放――そう宣告された瞬間、偽の聖女は天を仰ぎ、まるで当然のように微笑んだ。 「もちろんです。すべては神の御心のままに」

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小説を読もう2026/01/18
  • 現在の作品『雨の中庭で聖女は偽り、黒革の帳に追放を刻む砂時計』