あらすじ
語り手は、幼い頃からいつも「二番手」だった。
家では優秀な弟の影に隠れ、学校でも必ず誰かの後ろに立つ。
努力はしている。怠けてもいない。
ただ、一番にはなれなかった。
誰かに選ばれることも、真っ先に思い出されることもない。
そんな日々の中で、彼女はふと、口にしてしまう。
――誰でもいいから、私を一番に思ってほしい。
翌朝、枕元に現れた白い箱。
中に入っていたのは、特別に見えない小さな髪飾りと、
「一番になりたいなら、身につけてほしい」という言葉。
半信半疑でそれをつけた瞬間から、世界は静かに変わり始める。
家でも、学校でも、彼女は自然と中心に置かれる存在になる。
声をかけられ、選ばれ、意見を求められる。
理由は誰にも分からないが、彼女は確かに「一番」だった。
だが、その優しさと注目は、次第に不安へと変わっていく。
なぜ自分が一番なのか、誰も説明できない。
そして、髪飾りを外すことへの恐怖だけが、はっきりと形を持ちはじめる。
一番でなければ、誰にも見られない。
そう確信してしまった彼女は、もう元の場所に戻れない。
これは、
「一番になりたい」という願いが叶えられた末に、
選ばれ続けなければ存在できなくなった少女の物語。
確かに願いは叶った。
けれどその場所は、触れた途端に崩れそうな、
鏡花水月のように不安定な幸福だった。