あらすじ

語り手は、幼い頃からいつも「二番手」だった。 家では優秀な弟の影に隠れ、学校でも必ず誰かの後ろに立つ。 努力はしている。怠けてもいない。 ただ、一番にはなれなかった。 誰かに選ばれることも、真っ先に思い出されることもない。 そんな日々の中で、彼女はふと、口にしてしまう。 ――誰でもいいから、私を一番に思ってほしい。 翌朝、枕元に現れた白い箱。 中に入っていたのは、特別に見えない小さな髪飾りと、 「一番になりたいなら、身につけてほしい」という言葉。 半信半疑でそれをつけた瞬間から、世界は静かに変わり始める。 家でも、学校でも、彼女は自然と中心に置かれる存在になる。 声をかけられ、選ばれ、意見を求められる。 理由は誰にも分からないが、彼女は確かに「一番」だった。 だが、その優しさと注目は、次第に不安へと変わっていく。 なぜ自分が一番なのか、誰も説明できない。 そして、髪飾りを外すことへの恐怖だけが、はっきりと形を持ちはじめる。 一番でなければ、誰にも見られない。 そう確信してしまった彼女は、もう元の場所に戻れない。 これは、 「一番になりたい」という願いが叶えられた末に、 選ばれ続けなければ存在できなくなった少女の物語。 確かに願いは叶った。 けれどその場所は、触れた途端に崩れそうな、 鏡花水月のように不安定な幸福だった。

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カクヨム
カクヨム2026/01/17
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