あらすじ
無名の絵描きである語り手は、好きなキャラクターの二次創作を描き、SNSに投稿し続けていた。
描くことは楽しい。けれど、反応はほとんどなく、否定も肯定もされない「無風」の状態だけが、静かに心を削っていく。
ある夜、ふと心に浮かんだ願い。
――もっと、私の絵を見てほしい。
翌朝、iPadのホーム画面に現れた正体不明のアプリは、その願いを問いかけるように語りかける。
選択肢は【はい】か【いいえ】だけ。
語り手が【はい】を選んだ瞬間から、世界は変わり始めた。
線は迷わず、構図は決まり、描いた絵は次々と拡散される。
万単位の評価、増え続けるフォロワー。
彼女の絵は、確かに「見られる」ものになった。
だがその代償として、彼女は気づいていく。
流行や最適解は分かるのに、
自分が本当に好きだったはずのものが描けなくなっていることに。
見られるために描く。
伸びるから描く。
期待されるから描く。
願いは完璧に叶えられているのに、
描くほどに「自分」が薄れていく。
それでも彼女は描き続ける。
なぜならもう、
「見られない自分」には戻れないから。
これは、承認と創作の狭間で、
願いを叶えられた絵描きが、自分自身を失っていく物語。