あらすじ
人間界で「役立たず」と蔑まれ、生贄として魔界へ送られたオメガの青年、リノ。
彼が辿り着いたのは、冷徹な魔王ザルドリスが統べる、寒々しい石造りの城だった。
孤独と恐怖に震えるリノだったが、極限のストレスが彼の本能を呼び覚ます。
――寒いなら、作ればいい。
持ち前の裁縫技術と『巣作り本能』で、殺風景な牢獄を暖かな居場所へと変えていくリノ。
その「巣」の魔力に引き寄せられたのは、慢性的な不眠に悩む魔王その人だった。
「お前の作る空間は、私に安らぎを与えてくれた」
冷たい石の城が、柔らかな布と温かな光で満たされていくように。
凍てついていた二人の心もまた、ゆっくりと解け合っていく。
これは、捨てられた生贄と孤独な魔王が、互いの体温を知り、世界で一番温かい「家」を作るまでの物語。
【登場人物紹介】
◆リノ
羊のような柔らかい髪と琥珀色の瞳を持つ、小柄な青年。オメガ。人間界では「役立たずのオメガ」として冷遇され、魔王への生贄として捨てられた。しかし、極限状態になると発動する異常に高い「巣作り本能」と、神業レベルの裁縫・工作スキルを持つ。恐怖を感じると無心でクッションを作り始める癖がある。
◆ザルドリス
魔界を統べる魔王。圧倒的な魔力と冷徹な美貌を持つアルファ(アルファ)。常に眉間にしわを寄せているが、それは慢性的な不眠と激務によるもの。城の装飾や快適さには無頓着で、機能性一点張りの殺風景な城に住んでいる。リノが作り出す「巣」の魔力(快適さ)に抗えず、威厳を保ちつつも骨抜きにされていく。
◆ギル
魔王城の執事長を務めるガーゴイル。見た目は怖いが、リノによってリボンをつけられたり磨かれたりして、まんざらでもない様子でリノの補佐をするようになる。