あらすじ

梅雨の長雨に包まれた老朽アパート「コーポうずまき」三〇五号室に暮らす営業マンの〈私〉は、ある夜、隣室との境の壁が呼吸するように脈動していることに気づく。触れると生温かく柔らかい壁、聴診器で聞こえる肺の音――壁は確かに“生きて”いた。管理会社の点検では異常は否定されるが、壁は〈私〉にだけその正体を開示し、次第に部屋全体へと増殖していく。 やがて〈私〉は壁の呼吸と同調し、外界の空気を拒む身体へと変質。栄養も安らぎも部屋から与えられ、意識と肉体は空間に溶け込んでいく。侵入者を排除するために部屋は暴力的な“咳”を起こし、〈私〉は最後の役割として出入口の隙間を自ら塞ぐ。 人としての認識を失い、完全に「部屋」そのものとなった〈私〉は、三〇五号室の肺として静かに呼吸を続ける。次の入居者を待ちながら。

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小説を読もう2026/01/17
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