あらすじ
大正末期の帝都。不思議な異形が集う幻燈喫茶「月下香」で、上流階級の令嬢・蓮華は、声を失った死者たちのためにピアノを奏で、孤独を分かち合っていた。 彼女の秘密を知る唯一の「お姉様」である栞は、蓮華の霊能力を危惧しながらも、執着に近い深い愛情(エス)で彼女を外界から守り、独占しようとする。 折しも街では「童謡運動」の裏で少女たちが失踪する怪異が蔓延し、純真なはずの歌声が、やがて二人を帝都の底に眠る悍ましい怨念の渦へと引きずり込んでいく。 蓮華は、異界に取り込まれかけた最愛の栞を救うため、自らの「声」を代償にする禁忌の演奏を行い、栞は自らの命を削って蓮華の旋律を世界へ解き放つ道を選ぶ。 すべてが幻影のように消えた春の朝、声を失い独り歩き出す蓮華の胸には、消えぬ絆を象徴する銀の破片が、琥珀色の記憶と共に美しく輝いていた。