あらすじ

夕方、町内放送のチャイムが鳴り、おれは足を止めて空を見上げた。全体に茜色が滲み始め、雲の底が夕日に鈍く照らされている。 『こちらは防災――です。現在、――公園付近にて猿の目撃情報がありました。見かけた方は近づかず、役場までご連絡ください』 ……ほう、これは珍しいこともあるものだ。確かにこの町にはそこそこ大きな山があるし、畑も点在している。だが、猿が出たという話はこれまで一度も耳にしたことがなかった。 子供の頃からずっとこの町で暮らし、就職を機に一度離れ、仕事の都合で戻ってきてからしばらく経つ。その間に聞いた獣の話といえば、せいぜいハクビシンやリスくらいなものだ。 子供の頃は、どの山にも猿や猪がいるものだと漠然と思い込んでいた。だが現実はそうでもないと知ったとき、つまらなく感じたものだ。 こうしてわざわざ町内放送が入るということは、やはり相当珍しい出来事なのだろう。

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小説を読もう2026/01/17
  • 現在の作品猿はどこへ行った :約3500文字