あらすじ
猫を拾ったと思ったら、パンだった。しかも一斤。
その些細な“見間違い”から、悪役令嬢リゼットは王都中の噂の中心へと落とされていく。
猫だと思われ、呪いだと思われ、罪だと思われ、やがて「断罪されるべき悪役」だと決めつけられる。
誰も確かめようとせず、誰も立ち止まらず、見たものだけを信じて物語を完成させていく人々。
しかし彼女が抱えていたのは、罪ではなく“穴”だった。
施療院の物資が消え、命が失われていく帳簿の空白。
悪役が必要とされる裏で、本当に見なければならない現実。
これは、ざまぁも逆転劇も目的としない悪役令嬢譚。
断罪される側ではなく、断罪を必要とした側を照らす物語。
猫か、パンか、それとも悪役か。
見たものだけを信じた者たちの断罪と、
それでも残る“一斤分の希望”を描く、認識の短編ファンタジー。