あらすじ
声が小さい。
それだけの理由で、彼女は世界から少しずつ弾かれていった。
中学時代の教室で始まった嘲笑と沈黙。
言葉を発するたびに傷つき、やがて彼女は「話さない」ことで自分を守るようになる。
二十歳を過ぎても、その記憶は彼女の中に重く残り続けていた。
「忘れたい」
そう願った夜、部屋に現れたのは、
いらない記憶を入れるための小さな箱だった。
箱に入れた記憶は、確かに消える。
痛みも、恐怖も、理由も。
忘れたことで彼女は外に出て、働き始める。
けれど世界は変わらない。
同じ言葉を投げられ、同じ結果に辿り着く。
忘れても、消えないものがある。
原因を失ったまま、繰り返される「結果」。
これは、
記憶を失うことで救われようとした一人の女性が、
自分自身を少しずつ削り落としていく物語。