あらすじ
西新宿の古いワンルームマンションで一人暮らしをする私は、毎朝六時三十分に起き、部屋の東側の壁の前に立つ。
そこには、壁紙の内側から盛り上がるように存在する黒い隆起がある。
それは恐怖の対象でも、異常な現象でもない。
私にとっては、生活を正常に保つための「部品」のひとつだ。
物流会社で数字を入力し、決まった食事を摂り、決まった時間に帰宅する。
世界との接続が乱れた時、私は再び壁の前に立ち、隆起に触れて調整を行う。
ある夜、突然訪ねてきた妹は、その存在を「気持ち悪い」と断じる。
社会と家族、正常と異常の境界が揺らぐ中で、私の生活は静かに、しかし確実に変質していく。