あらすじ
魔法の強さがすべてを決める世界。
名門に生まれながら、ロウソクに火を灯すことすらできない「無能」の烙印を押された少女マヤは、家族に疎まれ家を追い出されてしまう。
行き場を失った彼女が辿り着いたのは、王都の隅にある「レリック・テイル(遺物の物語)」という名の古びた魔道具修理店だった。
店主のシオンは、かつて王宮の天才職人と呼ばれながら、ある事故をきっかけに心を閉ざし、今は世捨て人のように暮らしている銀髪の青年。
魔法は使えないマヤだったが、彼女には「道具たちの心の声」を聞き分ける不思議な才能『調律』が備わっていた。
最初はマヤを追い払おうとしていたシオンだったが、道具の不調を正確に言い当てる彼女の真摯な姿に、次第に職人としての信頼を寄せるようになる。
二人は「壊れた思い出」を抱えて店を訪れる客たちのために、マヤが声を聴き、シオンがその超絶技巧で直すという唯一無二のコンビとなっていく。
やがて二人は、シオンの心に深い傷を残した伝説の魔道具「黄金の風信子(ヒヤシンス)」の修復に挑む。一人では決して成し遂げられなかった奇跡を、二人の力を合わせることで乗り越えた時、止まっていたシオンの時間と、マヤの孤独な世界が鮮やかに動き出す。
不器用な二人が、ガラクタに囲まれた小さな工房で、自分たちの「本当の居場所」と「愛」を見つけ出していく、温かな異世界職人ファンタジー。