あらすじ

二〇三五年、日本では三十歳以上の国民が、法的に年齢を十歳若返らせることができる「マイナス十歳条例」が施行された。選択は任意だが、社会は若返りを選んだ者たちを中心に再編されていく。 大手広告代理店で働く三十歳の営業・〈主人公〉は、条例を選び、二十歳の大学生として人生をやり直す。一方、同棲中の恋人であるフリーランスデザイナーの〈彼女〉は、条例を拒否し、現在の時間を生き続けることを選ぶ。 大学に戻った主人公を待っていたのは、同じように若返りを選んだ仲間たちの、二度目の青春だった。彼らは過去を引きずることなく、新しい恋や夢に没頭している。その輪の中に、かつて別れた元恋人の姿もあった。十年前と同じ年齢、同じ場所で再会した二人は、過去をなかったことにしたかのように距離を縮めていく。 一方で、条例を拒否した現在の恋人は、時間の速度が合わなくなっていく彼との関係に違和感を募らせていく。彼女は彼を責めることも、引き留めることもできないまま、「戻らなかった者」として孤立していく。 二つの時間、二つの関係のあいだで揺れ動く主人公は、次第に気づき始める。若返ったはずの自分が、再び同じ選択を繰り返していることに。そして、青春を共有できる者同士の輪の中に、現在を生きる恋人が「異物」として存在してしまう現実に。 やがて、元恋人との関係が深まる一方で、現在の恋人との距離は決定的に開いていく。条例によって人生はやり直せても、感情と責任までは巻き戻せないことを、主人公は痛みとともに思い知る。 『Re-doing』は、人生をやり直す権利を与えられた社会で、やり直さなかった者、やり直してしまった者、そして取り残された感情を描く長編小説である。若さとは何か、選択とは何を奪うのかを、静かに、しかし残酷に問いかける。

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小説を読もう2026/01/16
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