あらすじ
「今、僕の挨拶……わずかに噛んだよね? ……うん、死のう」
白銀の髪に、非の打ち所のない気品。 ソルスハイム神聖王国の外交官シルヴィス・フォン・ルミナスは、その圧倒的な完璧さから「神の最高傑作」「銀光の聖公子」と称えられていた。
だが、その正体は――極度の対人恐怖症。
「他人にダサい姿を見られるくらいなら、死んだほうがマシだ!」 あまりに肥大化した自意識と羞恥心の果てに、彼は固有能力『潔癖主義者の回帰(パーフェクト・リセット)』を発動させる。
その能力は、【死ぬことで、直前のリセットポイントまで時間を巻き戻す】というもの。
・お茶会でクッキーをこぼした。――自決
・教科書の読み飛ばしに気づいた。――自決
・カッコいいセリフを言おうとして噛んだ。――自決
本来、国を救うために使うべき「死に戻り」を、彼は「自分の恥を書き換える消しゴム」として乱用し続けていた。
そんなある日、彼は王国の象徴である「聖女クラリス」の護衛を命じられる。 すべてを視通すと言われる聖女の隣で、一秒の隙も見せられない地獄の巡礼。 服を一ミリも汚さず、一筋の髪もうねらせず、吐く息の音程まで制御するために、シルヴィスは裏で数百、数千の死を積み上げていく。
しかし、その「異常なまでの完璧さ」は、聖女の目に予言者の如き神業として映り――。
「シルヴィス様……。貴方の瞳には、私には見えない『救いの未来』が視えているのですね?」
(違うんです聖女様。僕はただ、鼻毛が出てないか心配で五回ほど死んできただけなんです……!)
これは、恥をかきたくない一心で命を投げ捨てるエリート外交官が、なぜか世界最強の騎士として語り継がれてしまう、狂気と勘違いの英雄譚。