あらすじ
手がつけられないほど暴れ回る我が子に、疲れ果てていた母は、
ほんの一瞬だけ、心の中で願ってしまう。
――少しでいいから、いい子になってほしい、と。
翌朝、子どもは驚くほど聞き分けの良い子になっていた。
騒がず、泣かず、言われたことを正しくこなす。
周囲はその変化を喜び、母も安堵する。
けれど、母だけが気づいてしまう。
その子の笑顔が、どこか人形めいていることに。
ふとした仕草や視線が、あまりにも“人間らしくない”ことに。
日に日に育っていく子どもを、
母は次第に「自分の子ではない」と感じるようになる。
しかし、周囲の誰もが、その子を“元の子ども”だと言い切る。
やがて母は、静かに、しかし必死に訴え始める。
――私の子を、返して。
その声は、誰にも届かないまま。