あらすじ

※本作は中華圏の作家・迦兰多(Jialanduo)による書き下ろしです。※ 【背景】 文禄元年(1592年)。太閤・豊臣秀吉の号令下、三十万もの大軍が玄界灘を越えた。目指すは大明の征服、不朽の功名。しかし、釜山に上陸したその瞬間から、随軍書記官・津田幸之助だけが、この世界の決定的な「ズレ」を感じ取っていた。 【異変】 抵抗も、流血も、死体もない。 眼前に広がる朝鮮半島は、ただ甘ったるい腐敗臭が漂う巨大な「空き家」だった。民家の戸は開け放たれ、飯はまだ温かい。まるで、日本軍が到着する一秒前に、全住民が蒸発してしまったかのように。 だが、最前線の武士たちは狂気に陥っていく。彼らは「何万もの敵軍が見える」と虚空を切り裂き、泥の塊を「首級」と称して掲げ、夜な夜な地底から響く巨大な心臓の音に怯えた。 【二重の謎】 一方、明国の援軍として派遣された軍医・沈夢渓(シェン・モンシー)は、奇怪な解剖を行っていた。彼がメスを入れているのは、血肉を持つ人間ではない。無数の怨嗟が書き殴られた和紙と、紙粘土で練り上げられた「日本兵の怪物」だったのだ。 日本軍が見る「能面の海」と、明軍が見る「白骨の城」。二つの幻覚が戦場で交錯するとき、彼らは千年の時を越えた呪いの正体に触れる。 ――日明の戦争など、最初から起きていなかったのだ。 ここは古き邪神「鏡神(きょうしん)」の胃袋。恐怖を喰らい、敵意を具現化する場所。ここにいるのは異国の軍隊ではない。お前が最も直視したくない、お前自身の「心の影」だ。 これは集団ヒステリーと極限の心理戦が織りなす、救済なき歴史サスペンス怪談である。

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カクヨム
カクヨム2026/01/15
  • 現在の作品『修羅の海 ——戦なき戦の傷跡——』