あらすじ
誰も私を必要としなかった。
魔力という数値だけが人の価値を決めるこの国で、測定器が反応しない私は欠陥品だったからだ。
婚約破棄を突きつけられ、実家からも追放された元伯爵令嬢のリア。
彼女に残されたのは、亡き叔父が遺した辺境の廃工房と、ある秘密の才能だけだった。
木材の乾き、鉄の痛み、ガラスの願い。
彼女には、素材たちの囁きが聞こえるのだ。
魔力がないからこそ聞こえる声に従い、リアは廃材を宝物へと変えていく。
そんなある嵐の夜、工房に転がり込んできたのは、呪われた鎧に身体を蝕まれた瀕死の騎士だった。
魔術師たちが匙を投げたその呪いを、リアは魔法ではなく、素材との対話とハンマー一本で物理的に打ち砕く。
君の手は魔法よりも温かい。
孤独だった職人と傷ついた騎士。
二人の出会いは、やがて国中を支配する常識を覆し、止まっていた運命を動かし始める。
数値では測れない本当の幸福とは何か。
全てを捨てて辺境へ渡った彼女が、その手で掴み取る未来とは。