あらすじ
県立藍空(あいぞら)高校女子バスケ部の二年、**朝霧(あさぎり)柚葉(ゆずは)は、才能があると言われながらも、膝の古傷を理由に「本気になるのが怖い」まま走っていた。勝ちたいのに、勝つことが怖い。期待されるほど、息が浅くなる。
同じ部の親友で努力型の結城(ゆうき)真帆(まほ)**は、誰よりも練習するくせに「柚葉に追いつけない」焦りを隠して笑う。男子バスケ部の幼なじみ、**篠宮(しのみや)蒼(あお)は言葉が少ない。けれど、柚葉の足元だけを見て、痛いところに手を伸ばそうとする。その優しさが、いちばん危ない。
そして転入してきた天才、黒瀬(くろせ)澪(みお)。コート上で一切迷わず、勝つためなら誰でも切り捨てるように見える彼女には、誰にも言えない「正しさの代償」がある。顧問の榊原(さかきばら)航(わたる)**は、励まさない。慰めない。短い言葉で、逃げ道だけを塞いでくる。
地区予選へ向かう十話の中で、柚葉たちは勝敗よりも残酷なもの——自分の弱さと、言えない恋に向き合っていく。パスが届く距離、触れられない距離。近づくほど、すれ違うほど、心は熱くなる。最後に残るのは、優勝よりも確かな「戻れないあの頃」の音。ブザーが鳴ったあと、指先に残ったものを、彼女は言葉にできるのか。