あらすじ
「恋をした瞬間、あなたの記憶は一枚ずつ消えます」
そう告げられた日、私は泣かなかった。絶望するより先に、静かに決めたのだ。
——恋をしないで、生きる。できるだけ優しく。
ところが私の護衛に選ばれたのは、無口で不器用、理屈ばかりの若き騎士・レオン。
「感情の昂りを避ければいい。生活を最適化する」
そう言い切る彼は、言葉は少ないのに、毎日きちんと灯りをともす。湯気の立つスープを用意する。寒い夜は、私が震える前に毛布を掛ける。
恋をしないはずの暮らしの中で、私は少しずつ“温かいこと”を集めてしまう。
そして、正論を語る神殿の司祭は言った。
「その呪いは、国を守るために必要なのです」と。
失うのは、命ではなく、私という輪郭。
それでも彼は、最初から味方だった。
——私が私でなくなる前に、“私たちの答え”を取りに行くために。