あらすじ

高校二年の夏。 女友達の家に泊まると嘘をつき、あたしは幼なじみの如月の一人暮らしの部屋で、いつも通りの夜を過ごしていた。 恋愛感情はない。ただの友達――そう言い切れる関係が、心地よかった。 「コンビニ行ってくるから、留守番しといて」 珍しい言葉を残し、如月は外へ出ていく。 待ち続けるうちに不安になり、雨の街へ探しに出たあたしは、歩道橋の上から小さな公園を見下ろす。 そこで目にしたのは、雨に濡れ、背中を丸め、膝の上で固く握り締められた――如月の手だった。 その手は、誰にも差し出されることなく、ほどかれることもなく、ただ何かを耐えるようにそこにあった。 声をかけることも、触れることもできず、あたしはその場から逃げ帰る。 部屋に戻り、いつも通りの距離で横になる夜。 如月は何事もなかったかのように笑い、あたしもまた、同じ態度を装う。 けれど、あの手を見てしまった以上、もう以前の関係には戻れない。 恋でもなく、友情でもない曖昧な関係。 「恋愛ごっこ」と名付けて守ってきた距離は、触れなかった一つの手によって、静かに壊れていく。

連載情報

ウェブ小説

配信言語
カクヨム
カクヨム2026/01/14
  • 現在の作品恋愛ごっこ