あらすじ
六つの尾を持つ彗星の覚醒以来、世界は亀裂に引き裂かれ、怪物と魔法が溢れ出す影の舞台と化した。
強大な魔術師たちは力を奪い合い、人々は砕けた空の下で生き延びている。
そして一部の者には、左の手首に“名前”が刻まれる――魂の伴侶の名が。
黒曜石の牙に所属する精鋭魔術師、アレクサンダー・“サーシャ”・ケスラー。
ランクVIの実力者である彼は、身体を蝕む不治の病を隠しながら戦い続けている。
十八年前から、彼は自らの手首に刻まれた名を焼き消し続けてきた――エリオット。
冬の日、忘れ去られた修道院で出会った、あまりにも純粋な光を放つ少年。
一方、修道院で育てられた少年エリオットもまた、自らの腕に刻まれた見知らぬ名――アレクサンダー――に戸惑っていた。
彼はまだ知らない。
自身が忘れられた力の継承者であることも、その光が、氷をまとう男の魔法と呼応していることも。
亀裂と秘密に蝕まれたヨーロッパで、二人の運命は再び交差する。
病も、時も、命令も、彼らを引き裂くことはできない。
なぜなら彼らを結ぶものは、ただの名前ではない――
世界の崩壊に抗う、最後の絆なのだから。
そして影の中で、黒曜石の牙の司令官ガブリエル・ド・ロアンは見守っている。
彼は知っている。
この出会いが偶然ではなく、世界を救うために仕組まれたものであることを。