あらすじ
朝は来た。
だが町は、昨日の「順番」を引きずったままだった。
音や光は戻っているのに、人々の行動だけが噛み合わない。
誰が先で、誰が次か。
その当たり前だった順序が、静かに失われていく。
瓦版屋の前に並ぶ白い紙。
役所で止まる決裁。
等間隔で立ち止まる人々。
誰も間違えていない。
ただ「今、自分ではない」ことを、皆が直感的に理解し始めていた。
この町では、何かを書き、決め、進めることが力を持つ。
だが同時に――
書かないこと、決めないことにも、確かな重さが生まれ始めていた。
瓦版屋の吉次は、刷らない。
少女は、書かずに測りに来る。
影はそれを「順番の外縁」と呼ぶ。
順番から外れることは、逃げでも反抗でもない。
それが罰なのか、解放なのか、町はまだ決められない。
これは、行動する者ではなく、
「まだ書かなくていい時間」を引き受ける者たちの物語。
誰が先かではない。
誰が後かでもない。
問われるのは――
どこまで、書かずにいられるか。
名を持たない問いが、町と人を静かに選び始める中、
物語は、確かに次の段へ進み出す。