あらすじ
西暦2048年。瞬間移動技術「量子分解転送機」がインフラとなった世界。
その技術の実態は、「転送元で人間を原子分解(死)し、転送先で再構築(生成)する」という、究極のコピー&ペーストだった。
あの日、私の転送は失敗した。
転送先には「コピーの私」が無事に生成され、転送元には分解され損ねた「オリジナルの私」が残ってしまったのだ。
法律上、転送完了後のオリジナルは「産業廃棄物」として処理される運命にある。
社会的なIDも、財産も、家族さえも、すべてはコピーである「あっちの私」のものだ。
追手から逃れ、必死の思いで自宅に辿り着いた私が見たものは、
日々の疲れから解放され、私よりも快活に、私よりも優しく家族と笑い合う「理想的な自分」の姿だった。
「テセウスの船」のパラドックスを下敷きに描く、自己と愛のSF短編。
私が私であるために、私は昨日までの私を殺す。