あらすじ

王都に仕える聖女、ミオナ・ヤシロ。 彼女が祈れば、病は癒え、枯れた大地は潤い、人々は奇跡に涙する。 その力は本物で、疑う者など誰もいなかった。 けれど彼女は、祈られる存在でありながら、 誰にも「人」としては見られていなかった。 背が高いこと。 立つだけで空間が狭く感じられること。 祈りの最中、足元から小さな音がすること。 すべては神聖さとして解釈され、恐れと崇拝に包まれていく。 そんな中でただ一人、 男爵令息アーヴィン・ヴァルディスだけが違った。 「背が高いですね」 「天井、ぶつかりませんか」 「……近いです」 神としても怪異としても見ず、 ただ“背が高くて、音がして、胸が大きい女性”として接する青年。 その態度は、ミオナにとって初めての「祈られない視線」だった。 奇跡を否定しない。 けれど神話にもしない。 怖がらず、崇めず、ただ隣に立つ。 世界が魅入られている中で、 彼だけが魅入られなかった。 これは、 奇跡を起こす聖女と、 奇跡に飲み込まれなかった男が出会い、 制度の中にいながら「居場所」を選び取る物語。 そして最後に残るのは、 誰にも説明されない、 けれど確かに続いていく“気配”だけ。

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小説を読もう2026/01/14
  • 現在の作品『魅入られた世界で、魅入られなかった男』