あらすじ

「ふーっ……」 夜。とあるアパートの一室に、コトッと筆を置く音が小さく響いた。しかし、その乾いた音は直後に漏れた深いため息に呑み込まれ、部屋には重苦しい沈黙だけが残った。 天井からぶら下がった裸電球が、頼りない光を放ち室内を照らしている。畳には無数の絵の具の染みが広がり、壁際には空きペットボトルや丸めたティッシュ、使い切った絵の具のチューブが無造作に転がっている。生活感というより、疲労の蓄積のように見えた。 男は画家だった。 今描いている絵は完成間近。しかし、その胸には興奮も喜びもなかった。納得のいくところまで来ているはずなのに、心は冷え切っている。あるのはただ、絶望じみた諦念と自分自身に向けた苛立ちだけだった。 どうせ、この絵も誰からも評価されないだろう。そう考えただけで喉の奥が詰まり、自然とまた深いため息が漏れた。

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小説を読もう2026/01/14
  • 現在の作品評価 :約2500文字 :悪魔