あらすじ
1. 祝福は予定通り
その日は、すべてが予定通りに進んでいた。
会議室の壁はガラスで、外の曇天が薄く透けて見える。蛍光灯の白が、机の上の資料の角に冷たい影を落としていた。結衣は、スライドの切り替えに合わせて呼吸を整える。声の高さも、間の取り方も、今日のために何度も音読して調整した。
「では、立ち上げ初月は“運用定着”ではなく“救助フェーズ”から入ります」
“救助”。その単語がスクリーンに現れた瞬間、顧客側の役員の眉がわずかに動いた。結衣はそれを見逃さない。
この案件は大きい。プロジェクト管理DXのSaaSを、全国拠点に横展開する。現場の工程、承認、稼働、人員、会議体。すべてをひとつの画面に束ねる。成功すれば、会社にとって今年最大の実績になる。