あらすじ
透明なガチャポンのカプセルの中。
そこに収まっていたのは、首だけの男のミニフィギュアだった。
目を閉じ、口を大きく開け、叫ぶ表情のまま固定された存在。
彼には名前も記憶もない。ただ「叫び続けている」という状態だけが与えられていた。
昼の世界で彼は、ただのネタ玩具だ。
笑われ、引き出しに放り込まれ、忘れられていく“全4種”のうちのひとつ。
だが夜になると、世界は静かに裏返る。
人の気配が消えた部屋で、フィギュアやキーホルダーたちが意識を持ち始め、彼の声は初めて外へと届く。
叫びは、単なる音ではない。
それは選ばれなかった存在、忘れられた想い、消費されるだけだったものたちの感情を代弁する力だった。
彼の声に触れた人間は、理由も分からぬまま足を止め、心を揺さぶられていく。
動けない主人公。
昼と夜で異なる世界の法則。
そして、まだ姿を見せない“残りの3種”。
小さなカプセルに閉じ込められた叫びは、やがて透明な壁を越え、現実そのものにひびを入れ始める。
これは、声を持ちながら届かなかった存在が、世界とつながろうとする物語。