あらすじ

テラリウム、と言うものをご存知だろうか。ガラスのジャムの瓶、コップなどの中に、苔や石や砂利、恐竜のフィギュアや小人のフィギュアなどを敷き詰めて、並べて、自分だけの小さな箱庭を作って飾って楽しむことだ。最近、この国で流行っているのが、『宇宙のテラリウム』である。  ことの発端は京都大学のある研究チームが超電子顕微鏡と呼ばれる原子核の周りの電子の、さらにその中まで見通す顕微鏡を作ったことに始まる。結論から言うと、電子の中には「もうひとつの宇宙」があった。つまり、あなたの細胞や、靴や、周りの酸素、紙に書かれたインクの文字、ディスプレイの液晶、すべての原子の電子の中にはもうひとつの宇宙があり、そこにはもうひとつの地球があるかもしれないし、もうひとつの太陽があるかもしれない、ということだ。  もしその宇宙の中に地球のような星があったとしたら、それが未来の地球の姿であれ、過去の(例えば恐竜時代の)地球の姿であれ、人類にとって有益な情報をもたらすと思われた。しかし、いくらどの電子にも宇宙があると言っても、無数の電子から地球のような星を持つ宇宙を探すこと、そしてその宇宙の中からもうひとつの地球を探すこと、はとても難しいことだった。  何としてもこの研究を推進したい国家は自分の研究所のみで、もう一つの地球を探すことを諦めた。  実験器具を『宇宙のテラリウム』キットとして、一般人に売ることにしたのだ。もう一つの地球を、100億人の人類に探させる人海戦術である。『宇宙のテラリウム』は人の住める星などなくても十分綺麗なものだったので、自分だけの宇宙を持てると知った人々はこぞってこの星のまたたくインテリアを求めた。  そしてこの、とある山頂の国立天文台には世界中から貴重な『宇宙のテラリウム』が集められてくる。以下に記すのは、その貴重な宇宙サンプルたちについての報告書である。

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カクヨム
カクヨム2017/04/09
  • 現在の作品宇宙のテラリウム