あらすじ
社会人一年目、残業続きで心も胃袋も疲れ切った喜舍場 稔(きしゃば とおる)は、都内の少し古いアパートでひとり暮らしをしている。
ある冬の夕方、実家から届いたエコバッグ二つ分のみかんを抱えて帰宅した彼は、玄関前で隣人の六車ききと鉢合わせる。
ききは同い年のカフェ店員。明るく無邪気で、とにかくよく食べる大食い女子だった。みかん袋を見た瞬間、目を輝かせてむしゃむしゃ食べ始める彼女の姿に、稔は思わず笑ってしまう。
「……部屋で、ゆっくり食べます?」
その一言から始まったのは、こたつとみかん、そして少しずつ距離が縮まっていく“ご飯友達”の日々。
料理が壊滅的な稔と、食べることが何より好きなきき。二人は鍋、コンビニスイーツ、テイクアウトご飯を囲みながら、寒い冬をぬくぬく乗り越えていく。
壁の薄いアパートで聞こえる生活音、食べ過ぎて満腹な「ふぁ〜」、何気ない優しさに胸がきゅっとなる夜。
これは、まだ恋と呼ぶには少し遠いけれど、確かに幸せな“隣同士”の物語。
読後、きっとお腹が空いて、心があたたかくなる。