あらすじ
王都では、奇跡は起きない。
怪我をする者も病に倒れる者もなく、魔獣の脅威も遠く――人々はそれを「平和」と呼び、聖女エリシアの存在すら意識していなかった。しかし、王都の守護を担うその結界は、誰の目にも見えずとも確かに働いていた。
だがある日、新たな聖女候補トーニャ・アリシア・カルーアが王都に迎え入れられ、「真の聖女」として大々的に称えられる。今まで王都を陰ながら守ってきたエリシアは、突如として退けられ、婚約も解消され、王都から追放されることに。人々はその価値に気づかず、ただ新聖女の光に歓声を上げる。
解放されたエリシアは、幼馴染のヘイデンと過ごした辺境の村ウィルクレストへ帰ることを決意する。かつての日々を思い返しながら、彼女は村で静かに暮らすつもりだった――しかし、王都ではエリシアが去った途端、怪我や病気、魔獣の侵入といった「平穏の崩壊」が相次ぎ、人々は初めて本当の危機に直面する。
エリシアの結界がもたらしていた安全――それがどれほど王都にとって、王国にとって重要だったのか、人々は痛感することになる。
辺境で過ごすエリシアは、王都の喧騒を離れつつも、村人やヘイデンの絆を再確認し、見えない力で人々を守る真の「奇跡」の意味を知る。そして、華やかな光ではなく、静かで確かな優しさこそが、誰もが求めていた奇跡だったのだと悟る――。