あらすじ
夜明けの空に生まれたばかりの、名もなき雲の物語。
それは雲と呼ばれるにはあまりに幼く、ただ「存在したい」というかすかな確信だけを胸に、空を漂い始めます。光に触れて自らを知り、風に吹かれて世界の広さを学び、山を越えて大地の沈黙を刻む。鳥たちが運ぶ他者の記憶や、地上の子どもが放つ純粋な祈りを受け取るたび、雲は少しずつ重みを増し、孤独さえも自分の「窓」として抱きしめていきます。
しかし、一日の終わりは、形あるものとしての終わりの始まりでもありました。夕暮れに赤く燃え上がり、やがて夜の静寂の中で雫となって大地へ還っていく。けれど、それは決して「喪失」ではありませんでした。
本作は、散文詩のような美しい情景描写を通じて、目に見えない「つながり」と「循環」を描いた幻想叙事詩です。形あるものは移ろい、けれど心に刻まれた記憶は消えることなく巡り続ける。読み終えた後、ふと空を見上げたくなるような、優しく透き通った物語をお届けします。