あらすじ
水と緑に恵まれながらも、亡魔獣と呼ばれる魔物が徘徊する大陸〈ウエストロッド〉。
この国では、人は“職業”を得て、その力で生き抜くことを求められる。
魔法もまた効率と即効性が重視され、「弱く、時代遅れ」とされた光魔法《ホーリーライト》は、誰からも見向きもされない存在だった。
十二歳の聖職者・姫奏(ひめかな)は、その“価値のない光”を本気で育てている少女である。
母は出産直後に亡くなり、父は行方不明。頼りない状況でも彼女には一つだけ大切な宝があった。
それは、母が姫奏の誕生から九歳に至るまでを書き残した日記だった。
幼い姫奏にとってその一冊は彼女の選んだ光を肯定し、生き方を迷わせない“道標”となった。母という存在に触れられる唯一の手段であり、信じた道を踏み外さないための“バイブル”になっていた。
そして今、地中から伸びた謎のダンジョン〈奈落の塔〉を求めて冒険者が集い、街が生まれている。塔は日ごとに構造が変化し、亡魔獣が潜み、莫大な宝が眠るという。姫奏はそこでホーリーライトの価値を証明するため、塔に挑もうとするが、入口で「子供立入禁止」と止められてしまう。成り行きから戦士・阿波崎のパーティーに加わることになるものの、姫奏の光は地味で見えづらく、数値に反映されにくいため、期待される活躍とは程遠い。
しかし姫奏は知らない。
母の日記は、九歳で終わったわけではなかった。ただ、姫奏が持っているのがそこまでに過ぎないのだ。
そして日記の“続き”を持つ少女がいる。
純白の髪に、静かで感情の読めない少女――千雪(ちゆき)。
彼女はなぜその日記を持つのか、いつどこで入手したのか、何を知っているのか、一切を語らない。
ただ一つ、彼女はその続きをこう呼んでいた。
「純白の黙示録」
それは未来を記した書なのか。破滅の帳面なのか。
あるいは世界の“終わり”か“始まり”に関わる何かなのか。
千雪がその名の理由を語らない限り、誰も分からない。
やがて塔の最奥で、黒く沈黙していた《アークエレメント》が、姫奏の光に反応し、未知の輝きを取り戻した時――
点でしかなかった事柄が、静かに線へと繋がり始める。
最弱と呼ばれた魔法を育てる少女。
未来の頁を抱え、黙示録と名付けた少女。
母が遺し、まだ読み切られていない物語。