あらすじ
冬の横浜を歩く語り手は、戦争を終えたばかりの軍人である。かつて学生時代に通ったはずの街は、戦争の影響で人影もなく荒廃し、見覚えがありながらも他人の街のように感じられる。活気に満ちていた記憶と、今目の前にある静まり返った現実との落差が、街を歩くごとに浮き彫りになっていく。
休暇の散歩として訪れた横浜で、語り手は学生時代の自分を思い返す。忙しさや焦りの中で、街をただ通り過ぎ、若さを謳歌することなく過ごしていた過去。保存食を口にした瞬間、かつて食べていた安価なハンバーガーの記憶がよみがえり、失われた日常と時間への実感が胸に広がる。
戦争によって変わってしまった街と、自らが取り戻せない学生時代。その二つが重なり合い、語り手は「今を生きること」を後回しにしてきた自分自身への静かな後悔を抱えながら、再び無味な食料を口にし、静まり返った港を後にする。