あらすじ
帝国は、優秀な子供を奪う。
それは「教育」と呼ばれ、
実際には忠誠と選別の制度だった。
利用価値があると判断された子供は、家族から引き離され、
従わなければ壊され、従えば使い潰される。
――だから貴族たちは沈黙する。
才能を隠し、褒めず、悟られないように生き延びてきた。
エルディオール家の四男、アルスは知らない。
自分が異常なほど優秀であることも、
それが帝国に知られれば終わりだということも。
家族は彼を褒めない。
評価しない。
距離を取る。
それは冷遇ではなく、
帝国の視線から守るための選択だった。
だがアルスは誤解する。
「自分は足りない」
「まだ家の役に立てていない」
そう思いながら、
誰にも知られぬまま結果を出し続けてしまう。
やがてアルスは、
期待されていない配属として辺境領へ送られる。
そこで彼は出会う。
かつて神童と呼ばれ、
今は感情を失った“教育制度の失敗作”に。
その人物は言う。
「君は、まだ使われていない。
だから、ここに来てはいけない」
この言葉をきっかけに、
アルスは初めて世界の歪みに気づき始める。
剣を取らず、王を討たず、
帝国に悟られないまま進む反逆。
これは、
選ばれなかった少年の成り上がりではない。
選ばれてはいけなかった少年が、
“選別する世界”そのものを壊していく物語。