あらすじ
何もできず、何にもなれない。無味乾燥な日々しか送れない社会人の夏代燎の唯一の希望は、推しだった。
推しの正体は、天瀬ほたる。昔助けたことのある彼の幼馴染で、なんでもできる完璧美少女であり──それ故にすべてが平凡な燎とは釣り合わず、高校が別々になったのを機に関わりを失ってしまった存在だった。
でも、燎はそれでよかった。自分と違ってほたるが今羽ばたけているのなら、そしてその一助になれているなら、自分の人生にも意味があったと思えて応援を続けていた。
なのに──彼女はあまりに短い期間で、活動を引退してしまった。
燎は激しく後悔した。もっと、何かできなかったのかと。あの時、ほたると同じ高校に行けていればまた違う未来があったんじゃないかと。
その後悔と絶望のまま眠りについて……次に目が覚めると、中学二年生の時期にまでタイムリープをしていた。
ただし──あるのは現在までの記憶のみ。未来の記憶は引き継がなかった。
「そんなことある!?」
あまりにもお約束と違うハンデに燎は嘆きつつ。
けれど……記憶が無くても、引き継いだものはある。それはタイムリープ直前の、激しい後悔と無力感。
燎は理解する。中学二年の今、このまま釣り合わないほたると距離をとって離れれば……この凄まじく後悔した一周目と同じ道を辿るのだと。
だから、決意する。今度こそ間違わない。
ほたると、完璧美少女幼馴染と一緒に居られるように、同じ高校に行けるように。彼女に釣り合えるように、何が何でも本気で努力をするのだと。
その決意のもと、燎は努力して、努力して──
……燎は知らない。
一周目の彼は、様々な要因でやる気を失ってしまっていただけで。本気になれば、ほたると十分に並べる可能性を持った超隠れハイスペックだったことを。
燎は知らない。
その知識チートのない、だからこそ純粋な努力故に。その頑張る姿が周囲の心を動かし、一周目では芽が出なかった周りの才能を次々に覚醒させて天才たちに囲まれることを。
燎は知らない。
一周目で幼馴染のほたるが早くに引退してしまった理由が燎にあり……それが解消された二周目では、今まで以上にほたるが輝き──そして、一周目とは比べ物にならない激重感情を燎に向けてくるようになることを。
これはそんな、記憶は無く後悔だけを持ってきてタイムリープした少年が、純粋な努力と無自覚な人たらし力で周りを盛大に巻き込み……一周目を遥かに超える、最高の二周目の青春を送る話。