あらすじ

愛知県の地方都市に新設された特別養護老人ホーム「翠松園」。 そこは、身寄りのない者、重度の認知症を抱えた者、社会からこぼれ落ちた者たちを分け隔てなく受け入れることで、いつしか「最後の砦」と呼ばれるようになっていた。 介護福祉士の三浦恒一は、理想と使命感を胸に、この施設へ転職する。 だが、最新設備と理想的な理念の裏で、彼は次第に言葉にできない違和感を覚え始める。 記録は整い、監査は問題なく通過し、医師の判断も常に「妥当」とされる。 それでも、入所者は静かに衰え、ある者は突然、理由のはっきりしない死を迎える。 誰かが罪を犯しているわけではない。 だが、何かが決定的に欠けている――。 やがて施設を設立した理事長自身が、要介護者として翠松園に入所することになる。 立場が反転したとき、この施設は何を守り、何を切り捨ててきたのか。 真相は語られず、記録だけが淡々と残されていく。 これは、事件の物語ではない。 「何も起こらなかったこと」そのものを追う、静かな推理の記録である。

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小説を読もう2026/01/12
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