あらすじ

「愛してはいけなかった。君は瞬きの中に生き、僕は永遠の中に死んでいるから」 北の最果て、凍てつく「硝子の塔」に住まう魔術師アラリックは、感情を忘れた不老の徒である。数百年という静止した時間の中で、彼はただ世界の摩耗を眺めていた。しかしある雪解けの朝、塔の門前に捨てられた赤子――テオを拾ったことから、彼の「静寂」は音を立てて崩れ始める。 アラリックにとって、人間の成長はあまりに速すぎた。 一冊の魔導書を読み終える間にテオは立ち上がり、一度の冬を越す間にテオは少年の瑞々しさを手に入れる。アラリックが「育てた」のは、単なる命ではない。それは、自分の体温を奪い去るほどの、熱烈で、しかしあまりに短命な「愛」という名の猛毒だった。 テオが青年となり、アラリックに恋い焦がれるような眼差しを向けたとき、アラリックの指先が初めて震える。アラリックの肌は変わらず玻璃のように滑らかだが、テオの金髪にはすでに銀の糸が混じり始めていた。ファンタジーの理(ことわり)がもたらす「寿命の差」という残酷な断絶。テオが費やす一秒は、アラリックにとっては瞬きに過ぎず、アラリックの一日は、テオにとっての季節だった。 物語は、やがて来る「究極の看取り」へと加速する。 老いて枯れ木のような指となったテオと、変わらぬ美貌を保つアラリック。逆転した守護者と被守護者の関係。死の床でテオが願ったのは、自分を救う魔術ではなく、自分を「灰」にしてアラリックの物語の一部にすることだった。 「育てた愛」が、看取りを経て「永遠の欠落」へと変わる瞬間。 アラリックはテオの灰をインクに変え、白紙のページに彼の生きた証を刻み始める。それは、美しくも絶望的な、神をも恐れぬ「純愛」の記録。 本作は、エブリスタ第28回新星ファンタジーコンテストのテーマ「育てた愛」に対し、あえて「時間という名の暴力」を真っ向から描くことで応えるものです。 三村美衣氏への挑戦状: 単なる感傷に浸るのではなく、魔法と寿命の等価交換、長命種特有の虚無感といった、本格ファンタジーとしての設定の深さを追求しました。 圧倒的な描写密度: 髪の毛一本の輝きから、老いた皮膚の質感、凍てつく空気の匂いまで、読者の五感を制圧する「厚塗り」の文体で構築します。 これは、愛を育て、愛に壊される男たちの、残酷で甘美な看取りの物語。

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エブリスタ
エブリスタ2025/12/30
  • 現在の作品玻璃の揺り籠、灰の冠