あらすじ
商店街の外れに立つそのポストの色を、ある人は漆黒だと言い、またある人は深い紫色だと言う。それは確かにそういう色だと言う人もいれば、見る時間や角度によって違って見えるという人もいる。
形は丸型ポストだということには誰も異論がない。ただし、差し出し口のところには「郵便」という文字も、お馴染みの郵便マークもない。郵便物の収集時刻も表示されていない。
ある人はすでに使われなくなったポストが放置されているだけだと言い、またある人は商店街を彩るオブジェだという。しかし、郵便局の人はそんなポストがあった記録はないと言い、街で長く商売をしている商店会長もそんなオブジェは知らないと言う。
そして、郵便局も商店会も、そのポストに手紙が投函されても、一切関知しないと言う。
それでも、そのポストに手紙を投函する人が後を絶たない。なぜなら、そのポストに出した手紙には必ず返信がもらえる、そう信じられているからだ。
たとえそれが、決して返信があるはずのない手紙であっても。