あらすじ
額ではない。肩先でもない。
狙うべきは、首だ。
浅野内匠頭長矩(ながのり)は、回廊に跪きながら、眼前の老人の皺だらけの首筋をじっと見つめていた。
「おい、聞いているのか浅野殿。勅使饗応の作法がなっとらんと言うておるのだ」
吉良上野介の粘着質な声が鼓膜を揺らす。かつての私であれば、この屈辱に顔を赤くし、奥歯を噛み砕くほど悔しがっただろう。だが、今の私は違う。
「はっ、誠に申し訳ありませぬ」
私は薄く笑い、頭を下げた。
首を洗って待っていろ、とは言わない。お前の首は、私が斬るのだから。
浅野内匠頭は本懐を遂げることが出来るのか?