あらすじ
この社会では、
あらゆるものが正しく機能している。
選択肢は最適化され、
不要な迷いは取り除かれ、
誰も困らない日常が静かに維持されている。
主人公は、その裏側で働く削除判定員。
消すのではない。
ただ、「表示しない」と判断するだけの仕事だ。
使われなくなった言葉。
遠回りの道。
目的のない散歩。
理由のない質問。
それらは危険でも、禁止でも、間違いでもない。
ただ、もう必要とされなくなっただけだった。
物語は、新人として配属された主人公が、
10年をかけて中堅へと成長していく過程を描く。
仕事は効率化され、判断は簡潔になり、
日常はますます穏やかになっていく。
誰も反乱を起こさない。
誰も悲鳴を上げない。
世界は最後まで正常だ。
それでも、
読み進めるうちに、
ひとつの事実が浮かび上がってくる。
――この10年で、
何が表示されなくなったのかを。
本作は、
「問題が起きなかった未来」を記録する
静かなディストピア連作短編である。
特筆すべき問題は、確認されていない。