あらすじ

雪は降っていなかった。 それにもかかわらず、世界は常に雪の気配を返し続けていた。 声を発せば、言葉は意味になる前に白く反射し、 沈黙を置けば、その沈黙すら雪として戻ってくる。 呼びかけと応答の区別は失われ、 世界は一方的に「反響」だけを生成する装置となっていた。 街には音がなく、出来事も起こらない。 それでも、人々の内部では、かつての言葉や感情が 雪の粒のように砕け、堆積していく。 語り手は、自分が何を問い、 何を失ったのかを思い出そうとする。 しかし返ってくるのは、答えではなく、 問いの形をした雪の反射だけだった。 やがて語り手は理解する。 雪は世界に何かを与えているのではない。 呼びかける主体そのものを消去し、 「応答だけが存在する状態」を完成させているのだと。 これは、雪が降らない世界で起こる、 声なき反響の記録である。

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カクヨム
カクヨム2025/12/29
  • 現在の作品雪が秩序だった世界 長編