あらすじ
「……よし」
とある男。目の前にそびえ立つビルを見上げ、小さく気合を込めるように呟いた。一度背筋を正し、覚悟を決めた足取りでエントランスへと入っていく。
男は今、転職活動の真っ最中だった。オンラインで受けた一次面接は手応え十分。質問への受け答えは淀みなく、面接官の反応も上々だった。今日の最終面接で必ず合格を掴む――男はそう意気込んでいた。
受付で名乗り、手続きを済ませると、廊下を通って面接室の前まで案内された。壁越しに聞こえてくるかすかなざわめきや物音は、ここで日常を過ごしている社員たちのもの。今はまだ別世界の音のようで、より遠く感じられた。
男はその場で何度か深呼吸を繰り返し、意を決してドアをノックした。準備は万全。想定される質問と回答は、徹底的にシミュレーションしてきた。どんな話題を振られても対応できる自信はあった。だが――。
「失礼します! ……ん?」