あらすじ
六月、衣替えの季節。
心に傷を抱えた少年――藤堂樹は、長袖のクラスメイト――霧島奏斗の仕草に、ふと違和感を覚える。
落としたペンを拾おうと伸ばした手の先で、袖口から“赤い痕”がちらりと見えた瞬間、胸の奥がざわついた。
――また、気づけなかったらどうしよう。
兄を救えなかった後悔が、樹の足を止める。
誰も気づかない痛みを抱えた奏斗と、過去に囚われたままの樹。
二人の孤独は、静かに重なり合っていく。
痛みは消えない。
傷も簡単には癒えない。
それでも、夜明けの光の中で二人は少しだけ前へ進む。
これは、痛みの向こう側へ進もうとする二人の小さな一歩の物語。