あらすじ
下請け映像プロダクション勤務の宮原紡(みやはら・つむぐ)はインドとタイの若年娼婦及び男娼を取材中、奇妙な妙な噂を耳にする。どんな受給者(レシピエント)とでも拒絶反応を起こさない万能臓器の闇市場があるというのだ。もちろん臓器の移植には生体拒絶反応が伴うので俄かにそれは信じられない。宮原と付かず離れずの関係の恋人坂下理紗子(さかした・りさこ)は「その用途だったら生体クローンよりもiPS細胞の方が望ましいでしょ」と宮原との会話の末に結論付ける。
謎の万能臓器について意外なところから情報がもたらされる。N新聞社勤務の情報通三枝木晴正が「世界でも有数のハイテク企業CEOが膵臓癌から立ち直ったのは万能臓器のお陰だ」と告げたのだ。また同様の移植を受けたと思われる金持ちたちが移植後必須となるはずの免疫抑制剤を服用している様子がないとも言う。
その三枝木が突如姿を晦ませる。宮原がフィリピンへ臓器売買の取材に行く前日のことだ。伝手を頼り取材中に宮原はマニラ速報社の記者アブドゥにアポイントメントを取り付ける。アブドゥは失踪した三枝木が取材メモ中に残した人物の一人。そのアブドゥが万能細胞は奇跡だと宮原に告げる。更にその奇跡は宗教上の奇跡ではなく奇跡を起こした本人そのものに由来するとも言う。万能細胞の符丁は『ダビデのパン』で、それは現在まで生きながらえたイエス・キリストそのものだ、というのだ。しかも、その売買を取り仕切っているのが……。