あらすじ
逆さに被った帽子と、首に下げた赤い首飾り。
常に大声で叫ぶ青年レオは、海賊船《リング・ハウル号》を率いる異端の海賊である。
彼の船は帆を持たず、巨大な鉄の輪を回転させて海を進むという、常識外れの構造をしていた。
レオは略奪を目的とする海賊ではない。
国や権力によって奪われたもの――居場所、名前、誇り、そして「声」を取り戻すために海を渡る、“取り戻す海賊”だ。
かつてレオは、声が大きいという理由だけで島を追放された少年だった。
叫ぶたびに否定され、黙ることを強いられた過去は、彼の胸に深い傷を残した。
だが同時に、彼に一つの決意を与える。
「黙らされるくらいなら、世界に届くまで叫ぶ」と。
仲間たちもまた、何かを失った者ばかりだ。
故郷を奪われた者、名前を消された者、存在を否定された者。
レオの叫びは、そんな彼らの心を繋ぎ止め、前へ進ませる力となっていた。
物語は、音そのものが消える禁忌の海域「沈黙の海」への突入をきっかけに大きく動き出す。
波の音も、風の音も、人の声さえも失われるその海には、世界から“声”を奪う怪物《サイレンサー》が潜んでいた。
仲間たちが沈黙に呑まれる中、レオだけは叫び続ける。
その声はやがて音を超え、赤い光と衝撃となって海を震わせる。
鉄の輪に込められた想いと叫びが共鳴したとき、沈黙を支配する存在は打ち砕かれる。
戦いの後、レオは海賊王を目指さないと語る。
彼の目的はただ一つ――
叫びたい者が、自由に叫べる世界を守ること。
《リング・ハウル号》は今日も海を進む。
世界の理不尽に吠え、奪われた声を取り戻すために。
これは、叫びを武器に戦う、一人の男と仲間たちの海洋冒険ファンタジーである。